モチヅキ スノーソー
¥9,130 (税込)
元祖モチヅキスノーソーよりも5cm短くして、全長47cmに。雪洞内でも取り回しがしやすく、バックパックの背面に挿入できるサイズに設計されている。
スペック | |
サイズ | 刃渡り:34cm 全長:47cm |
総重量 | 190g(本体160g) |
付属品 | ケース付き |
素材 | ステンレス鋼/天然木 |
生産国 | JAPAN |
「世界中がこのスノーソーの復活を心待ちにしていたでしょう」
雪洞を掘ったり、テントの周りに風防ブロックを積んだり、雪上生活で欠かせないスノーソー。
日本製スノーソーの代名詞、モチヅキ・スノーソーが、7年の沈黙を破ってついに復刻!20年来の愛好者であり、復刻版の監修者でもある国際山岳ガイド佐々木大輔さんに話を聞いた。
国際山岳ガイド
難易度の高い沢登りから高所BCスキーまでマルチに山を案内する国内トップクラスの山岳ガイド。生まれ故郷北海道に拠点を起き、国内外の雪山を滑るビッグマウンテンスキーヤーの先駆け的存在でもある。国際山岳ガイドの資格を持ち「ガイド 盤渓」を主宰。
はじめてモチヅキ・スノーソーを手にしたのはいつ頃ですか?
「たしか2001年23歳のとき、はじめてデナリ(マッキンリー山)へいったときだったと思います。北海道の秀岳荘を尋ねたら『雪を切るならこれだよ』っておすすめされて。ベースキャンプを張るときに風除け用のブロックを作るために、これと海外製のスノーソーを2本、計3本デナリへ持っていきました。これがもう抜群に調子良くて。猛吹雪のなかで氷みたいに硬いカッチカチの雪を切るときに、ほかのモデルとくらべて仕事量が2倍ありましたね」
それから雪山キャンプでは欠かせない道具になっていったのですね。
「約10年前に南極観測隊の一員として南極へいきました。氷を研究する学者さんたちと一緒だったんですが、彼らもみんなこれを持っていました。硬い雪を効率よく切るにはこれが一番だと。一番びっくりしたのは、2017年のデナリ大滑走のときです。アラスカにデナリ遠征をサポートするガイド会社が何社かあるんですけど、彼らもみんなこれを使っていたんです。もっとも標高が高く厳しいハイキャンプへいくと、ショベルやスノーソーをデポしてあるところがあって、よく見るとスノーソーの8割がこれ。硬い雪を切る状況下では絶大なる信頼があるんです」
海外でも認知されているとは驚きました。でも、なぜ海外には同じようなスノーソーがないのでしょう?
「このスノーソーは、日本を代表する金物の街、燕三条の金物加工技術があってこそ生まれた道具だからです。元祖モチヅキ・スノーソーは、ノコギリ職人の手によって、歯を左右交互に曲げる加工=アサリを導入しています。このアサリによって、氷を刻み、氷を掻き出す効率を飛躍的に向上させています。冷蔵庫がない時代に氷を切り売りする氷屋さんのために作られた刃物を応用したギアなのです」
ノコギリ職人の高齢化と減少によって、生産拠点が燕三条から中国へ移りました。それでもなお、モチヅキ・スノーソーはこれまでの使いやすさ、機能を引き継いでいます。具体的に改良点を教えてください。
「旧モデルは、日常的にザックに入れて持ち歩くには長すぎたので、ザックのなかで収まりがよいサイズにしました。プローブやショベルなどと一緒にパッキングできる長さです。スノーソーは雪山ですぐにぱっと出して使いたいギアなので、すぐに取り出せる点は大事です」
ハンドルも少し短くなったようですが?
「ハンドルのベースとなる部分は、そんなに変えていません。ただ、ハンドルの末端、小指の近いところに凸をつけ、ひっかかりを設けました。冬山で長い時間硬い雪を切っていると、握力がなくなって、グローブが濡れて、すっぽ抜けることが多々あります。そのすっぽ抜けをここで止める。大きなオーバーミトンでも歯に触れることなく、力強く握れる絶妙なサイズに仕上げています。あと、ハンドルの厚さは旧モデルよりもちょっと薄くしています。雪山で厚いグローブをしたときに、グリップが太いと力を入れにくく、握力がないと握れないことがあります。薄くすることで握力を温存できるというか。ハンドルだけでも3、4回サンプルを作り直しましたね」
仕事量が群を抜いているステンレス製の刃について、教えてください。
「ステンレスの板をバチンと切っただけではなく、アサリをつけて、なおかつ1歯1歯の先端を鋭く削ることで、切れ味を生んでいます。一般的なスノーソーって目が細かいノコギリ状のモデルが多いですよね?でも、これは歯が深く、かつアサリがあるので雪を多く排出できます。柔らかい雪ならノコギリ状のモデルでも事足りるけど、雪が硬ければ硬いほどこれが生きてくる。残雪期のカチンカチンの硬い氷で他のメーカーと試してみれば一目瞭然。仕事量がぜんぜん違います」
旧モデルは先端が丸くなっているのに対して、復刻モデルは先端まで歯がついていますね。
「硬い雪に対して最初のとっかかりをつくりたかったので、突端まで歯をつけました。厳しい環境下で少しでも作業が捗はかどるようにギリギリまで攻めました。逆に手元に一番近い歯はいらなかったかもしれませんね。グローブを傷つけるし、ここまで引くことはないでしょうから。ぼくはこの歯をカットしようと思っています」
刃に刻まれたメジャーにはどんな意味があるのでしょう?
「最大30センチの長さを測ることができます。30センチというのは雪のコンプレッションテストをするときの規格です。先端には雪の結晶の大きさを測るメジャー付き。弱層になりやすい結晶か?くっつき始めている結晶か?結晶のサイズ、カタチを観察する際に役立つギミックです」
監修者として、使用上の注意点はありますか?
「雪崩対策道具として考えたとき、注意点がひとつあって、たとえばデブリの中に木の枝が混ざっていたとき。雪を切る道具なので、枝を切る能力はありません。だから、ぼくはコンパクトなノコギリを1本持っていきます。あくまでも雪を切ることにフォーカスを当てた道具ということです」
この英語のメッセージは、なんですか?
「よくぞ聞いてくれました。これが一番重要(笑)。これはDon’t cut yellow snow! という刻印。Don’t eat yellow snow!というのが北米でよく言われる原型で、ションベンかかっている雪を食うなという意味。それでは直接すぎるから、切るなよと、置いとけよと(笑)。雪を切って溶かして、その水飲むなよと。衛生面への配慮も忘れていない気がきく逸品に仕上げました」